トップメッセージ

「芝浦ビジョン2033」の策定

当社グループは、前中計の成果を土台に新たな成長を目指すにあたり、今後の事業環境の予測に取り組みました。半導体分野は短期的には一旦、投資が減少するものの、中長期的には社会全体のデジタル化が今後も進展し、市場全体は大きく伸びることが予想されます。また、FPD分野ではマイクロOLED(有機EL)、マイクロLEDなどの新しい技術によるディスプレイの登場が待たれています。私たちは、このような両分野の先端技術にいち早く対応していくだけでなく、カーボンニュートラル、気候変動問題、地政学的リスク、サプライチェーンのリスク増大といったさまざまな社会課題に取り組んでいかなければなりません。これらの課題はいずれも短期では解決できないものなので、従来からの3か年という短いスパンではなく、6年先、10年先を視野に入れて経営計画を立案していく必要があると考えました。そこで、市場、技術、環境、供給に関する中長期の変化や課題を洗い出し、それらを踏まえた「芝浦ビジョン2033」を策定しました。そこでは、私たちの10年後のありたい姿を「社会やお客様の将来課題とそこにある潜在的ニーズを把捉して能動的に提案・解決し、お客様と共に成長する企業」と定めました。さらにこのビジョンを達成するための4つの重点的取り組みを設定し、3つの中期経営計画(3か年)をステップとして達成を目指します。
重点的取り組みの1つめは「ポートフォリオ」です。SPEでは、現在の当社の強みとなっている既存のGNT製品に加えて新たなGNT製品を創出し、事業拡大を目指します。FPDでは、新型あるいは次世代ディスプレイの製造装置の開発を加速し、準備を行っていきます。
2つめの「技術」では、まずお客様の課題とニーズをしっかり把捉すること、そして前中計で積み残した課題であるサービス事業を強化し、お客様に対して製品とサービスがより一体化した提案を行い、付加価値向上を図っていきます。
3つめの「人財」に関しては、長期ビジョンの達成を担う人財を育成していくため、将来を見据えた採用活動を積極的に進めていこうと考えています。
4つめの「財務」については、成長性と資本効率の両面を意識した財務体制の強化を進めます。

新中期経営計画2023-2025のスタート

2023年度にスタートした新中期経営計画は「芝浦ビジョン2033」のフェーズ1と位置づけています。次の成長に向けた土台強化が本中計の最重要課題であり、それに向けた投資を積極的に推し進め、2025年度に再び営業利益100億円超を目指します。
1つめの柱は、「SPE分野のさらなる拡大」です。GNT製品群を異なる用途、顧客、エリアに広げ、シェアアップを図っていきます。それと同時に継続的な新機種・新製品開発で次世代GNTの種まきを行います。
2つめの柱は「持続的成長に向けた投資」を積極的に行っていきます。当社グループは、さまざまな会社が1つとなった沿革から、半導体製造装置の前工程と後工程、FPD製造装置の前工程と後工程、真空応用装置の技術者を備えており、1社でこのような技術基盤を持つ企業は世界でも稀であると自負しています。研究開発関連投資は前中計よりも約63億円多い、3か年総額で200億円を計画し、使途としては研究開発費、評価設備の整備、研究開発における人財への投資を行います。
3つめの柱である「課題とニーズの把捉」については、営業から開発、設計、評価、製造・立ち上げ、サービスと、一連のプロセスフローに関わる全員で取り組みます。このようにお客様への価値提供プロセスのすべてを自社で行っていることは当社の大きな強みであり、お客様のニーズや課題を全員で拾い上げ、即座に応えるとともに、お客様の将来課題と潜在的ニーズを把捉して新しい開発テーマへと振り向けていく活動を推進していきます。それによってお客様との相互理解が深まり、信頼関係が強まり、お客様と一緒に成長していく企業となることができるでしょう。
4つめの柱となる施策は「マテリアリティと連動したサステナビリティ経営推進」としました。

芝浦メカトロニクスグループのマテリアリティ

当社グループは、2022年6月にマテリアリティの特定と発表を行いました。私たちはこれまでもサステナビリティへの取り組みとしてCSR活動を推進してきましたが、ESGを重視した経営が世界の主流になる中で、私たちがこれまで行ってきた活動を、現在のサステナビリティを巡る課題に照らして、もう一度捉え直し、整理すべきだと考えたことがマテリアリティ特定の背景です。
初めに「芝浦メカトロニクスグループ サステナビリティ基本方針」を策定し、その方針を具現化していくため「サステナビリティ委員会」を発足しました。そこでESGの課題を列挙し、その膨大な課題の中から当社グループの経営戦略と関係の深いESGの課題を抽出、それらをマテリアリティに落とし込むというステップを踏みました。その結果、事業を通じて展開するマテリアリティ4つ、価値創出の基盤となるマテリアリティ5つを特定しました。これらの重点課題に目標を設定し、個々に具体化していきます。
私自身、9つのすべてを重要視していますが、中でも気候変動に関する「CO2排出量(Scope1、2)2030年度までに50%削減(2019年度比)」という目標を重要視しており、これをクリアする事業運営を行っていくことは企業の存続条件であると認識しています。目標達成に向けて各施策に落とし込んだ取り組みをすでに始めています。
そしてもう一つ、「中核人財の登用における多様性確保」も当社グループがまだクリアできていない大きな課題であり、「2033年度までに女性管理職比率10%以上」という目標に向けて取り組んでいきます。

ステークホルダーへのメッセージ

IoT、AI、5Gや6Gなどのキーワードが飛び交い、技術革新が加速度的に進んでいく社会となっています。中長期的な視点で見て、半導体は今後ますます重要性が高まっていくことは間違いないでしょう。FPDも同様に、長期的な需要は堅調に伸び、新しい革新的なデバイスが登場する期待が大いに持てます。
そのような成長分野において私たち芝浦メカトロニクスグループは、半導体製造装置の前工程と後工程、FPD製造装置の前工程と後工程を1社で手掛けるという他にはない特徴を持つ企業として存在感を示しています。半導体とFPDの技術革新と市場成長に私たちの技術をもって貢献し、それとともに、当社グループも成長を実現できると確信しています。
ステークホルダーの皆様には、ぜひ当社グループの3年後、10年後にご期待いただきたいと思います。

  • 本メッセージは2023年9月発行の統合報告書CEOメッセージより転載しています。

芝浦メカトロニクス株式会社
代表取締役社長

今村 圭吾